近年、全国的に空き家が増加しており、放置された空き家は様々なトラブルの原因となります。
倒壊の危険性、犯罪の温床、近隣住民への迷惑など、放置された空き家がもたらす問題は
深刻です。この記事では、実際に起こったトラブル事例と、その解決策について詳しく説明します。
放置された空き家が引き起こす主なトラブル
建物の倒壊リスクと老朽化
長年放置された空き家は、建物がだんだん古くなっていき倒壊のリスクが高まります。
これは単に見た目の問題だけではなく、実際に地震や台風などの自然災害が
発生した場合、老朽化した建物は容易に倒壊する危険性があり、
周囲の住民や通行人に重大な危害を加える可能性があります。
さらに、建物の構造材が腐食したり、屋根瓦が剥がれ落ちたりすることで、
破片が飛散し、人的被害や物理損害を引き起こすことも考えられます。
このような事態を避けるためには、定期的な点検と適切なメンテナンスが不可欠です。

犯罪の温床となる危険性
放置された空き家は、残念ながら犯罪者にとって格好の標的となってしまうことが
あります。無施錠だったり、管理が行き届いていない空き家は、不審者が簡単に入り込んで
拠点にしてしまうこともあるのです。

実際に、空き家を使った不法占拠や不法投棄、さらには違法行為の場になってしまうケースも
報告されています。
加えて、空き家は放火の標的となるリスクも高く、周辺住民の安全を著しく
脅かすことになります。一度火災が発生すれば、近隣住民にも延焼する可能性があり、
甚大な被害をもたらす可能性があります。
こうしたリスクを減らすには空き家を適切に管理することが大切です。
定期的な見回りや清掃、施錠の徹底をはじめ、防犯カメラの設置や警備サービスの導入も
有効な対策となります。
地域社会の安全を守るためにも、空き家の所有者は責任を持って管理を行う
必要があります。
衛生環境の悪化と害虫の発生
空き家が長期間放置されると、衛生環境は著しく悪化し、様々な害虫やネズミなどの
害獣が住みつき、繁殖する温床となってしまいます。
雑草が生い茂り、雨水が溜まることで、蚊やハエなどの害虫も発生しやすくなります。
また、食べ残しやゴミなどが放置されたままになると、悪臭が発生し、
周辺住民の生活環境を悪化させるだけではなく、ゴキブリやネズミなどの害獣を
誘引する原因となります。これらの害虫は病原菌を媒介する可能性もあり、
感染症のリスクを高めることにもつながります。
さらに、動物の糞尿や死骸などが放置されると、悪臭が悪化し不衛生な状態が続きます。
このような状態を放置すると、近隣住民からの苦情や訴訟に発展する可能性もあります。
衛生環境の悪化を防ぐためには、定期的な清掃や除草作業が不可欠です。
必要に応じて害虫駆除や消毒を行うのも効果的です。
特に広い敷地で手が回らない場合は、専門業者に依頼するとより安全で確実に
管理できます。
空き家放置による損害賠償の事例
倒壊による損害賠償
老朽化した空き家が倒壊し、隣の家や通行人に被害を与えてしまった場合、空き家の所有者には
損害を補償する責任が発生します。被害の大きさや所有者の管理状況によって金額は変わりますが、
場合によっては高額になるケースも十分考えられます。
例えば、倒壊によって隣家が全壊してしまった場合、建物の修理費や家財の損害、さらに仮住まいの
費用まで負担しなければならないこともあります。
また、通行人がけがをした場合は、治療費や慰謝料、仕事を休んだ分の補償なども必要になります。
こうしたトラブルを防ぐためには、日ごろから空き家の状態を確認し、倒壊の危険がないかを
チェックすることが大切です。放置された空き家は、所有者にとって大きなリスクとなることを
認識しておくべきでしょう。

落下物による損害賠償責任
老朽化した空き家の屋根や瓦の一部が落ちて、通行人がけがをしたり、停めてあった車を
壊してしまった場合、空き家の所有者には損害を補償する責任が生じます。
このような事故は、定期的なメンテナンスを怠ったことが原因であることが多く、
所有者の過失が認められる可能性が非常に高くなります。
損害賠償の額は、けがの程度や車の修理費用などによって異なりますが、
場合によっては高額になることもあります。
特に落下物が原因で重傷を負わせてしまった場合には、治療費や慰謝料だけでなく、
逸失利益なども賠償の対象となる場合があります。
このような事態を未然にい防ぐためには、定期的な点検を行い、老朽化が進んでいる
箇所があれば、速やかに修繕を行うことが重要です。特に台風や地震などの自然災害の後には、
必ず点検を行い、異状がないかを確認するようにしましょう。
また、通行人に危険が及ばないように、落下防止ネットを設置するなどの対策も有効です。

犯罪利用による損害賠償責任
空き家が犯罪に利用され、その結果として近隣住民に何らかの損害を与えてしまった場合、
空き家の管理状況によっては、所有者が損害賠償責任を負う可能性が生じます。
例えば、空き家の施錠が不十分で、だれでも容易に侵入できる状態であった場合、その空き家を
拠点として犯罪が行われ、近隣住民が被害を受けた場合などが該当します。
具体的には、空き家で薬物の売買が行われていた場合や、不法占拠者が騒音や
迷惑行為を繰り返していた場合などが考えられます。このような場合、空き家の所有者は、
管理責任を怠ったとして、損害賠償を請求される可能性があります。
損害賠償の額は、損害の大きさや内容によって異なりますが、
場合によっては高額になることもあります。このようなリスクを回避するためには、
空き家の管理を徹底し、不審者の侵入を防ぐためにの対策を講じることが重要です。
放置空き家の効果的な解決策
空き家管理サービスの利用
専門の空き家管理サービスを利用することは、放置された空き家を適切に管理するための
有効な手段の一つです。これらのサービスでは、定期的な巡回・清掃・修繕など、
空き家の維持に必要な様々な業務を代行してくれます。
例えば、定期的な巡回では、建物の状態や設備の故障などをチェックし、
必要に応じて修繕などを行います。清掃では、室内の清掃や庭の手入れなどを行い、
衛生的な環境を維持します。
空き家管理サービスを利用することで、所有者は時間や労力をかけずに、
空き家を適切に管理することができます。また、専門業者による管理は、建物の老朽化を遅らせ、
資産価値を維持することにも繋がります。
賃貸物件としての活用
空き家をリフォームし、賃貸物件として活用することは、空き家問題の解決策として
非常に有効です。賃貸物件として活用することで、空き家から安定した収入を得ながら、
建物を維持することができます。また、人が住むことで、建物の老朽化を防ぎ、防犯効果も期待
できます。
賃貸物件としての活用は、空き家の所有者にとって、経済的なメリットだけでなく、
空き家が活用されることで地域社会の活性化にも貢献することができます。
空き家の売却
使っていない空き家をどうするか…と悩んでいる方にとって、空き家を売却することは、
管理の負担から完全に開放される有効な方法です。
特に、遠方に住んでいて管理が難しい場合や、維持管理にかかる費用や時間を抑えたいと
いった場合には、売却が最適な解決策となることがあります。
不動産会社に仲介を依頼することで、買い手を探してもらい、売買契約の手続きを代行
してもらうことができます。また、買取業者に直接買い取ってもらう方法も
あります。買取業者は、仲介手数料がかからないため、費用を抑えることができます。
空き家の売却価格は、建物の状態や立地・周辺相場などによって大きく変わります。
そのため1社だけでなく、複数の不動産会社に査定を依頼し、比較検討するのがお勧めです。
特定空き家に指定された場合の対応
特定空き家とは
「特定空き家」とは、周囲の環境や安全に悪影響を与えていると市区町村から判断された
空き家のことを言います。
例えば、次のような状態の空き家が対象になる可能性があります。
・建物が老朽化して、倒壊する危険がある
・ゴミが放置されて悪臭や害虫が発生している
・草木が伸び放題で近隣の景観を損ねている
・不審者が侵入しやすく、防犯上の問題がある
こうした空き家は「空き家対策特別措置法」という法律に基づき、市町村が「特定空き家」
として指定します。
特定空き家に指定されると、固定資産税の優遇措置が解除され、税負担が大幅に
増加します。これは、特定空き家の所有者に対して、適切な管理を促すための
措置です。また、特定空き家は、行政による指導や勧告、命令の対象となり、
改善命令に従わない場合には、行政代執行が行われる可能性もあります。
特定空き家に指定されないようにするには、日ごろから適切に管理し、
倒壊の危険性や衛生上の問題がないように努める必要があります。
定期的な点検や清掃、修繕などを行い、周辺住民の生活環境に配慮することが
重要です。

行政代執行のリスク
特定空き家に指定されたにも関わらず、状態が改善しない場合、最終的には
行政が強制的に解体や修繕を行う「行政代執行」が実施される可能性があります。
これは、周囲の住民の安全や生活環境を守るために、市町村が最終手段として行う措置です。
行政代執行までの流れ
①特定空き家に指定される
空き家が「当会の危険がある」「衛生上問題がある」などと判断されると、まず「特定空き家」に
指定されます。
②行政からの指導や勧告
市区町村から「修繕してください」「解体してください」といった改善の指導が入ります。
③命令・最終通知
所有者が改善に動かない場合、正式な命令や通知が出されます。
④行政代執行の実施
それでも対応がないと、行政が所有者に代わって強制的に解体や修繕を行います。
行政代執行にかかる費用と負担
行政代執行が行われた場合、かかった費用はすべて所有者の負担です。
費用には次のようなものが含まれます。
・建物の解体費用や修繕費用
・行政が手続きを行うために事務費
・作業員の人件費や廃材処理費用など
行政代執行は、所有者にとって大きな経済的負担となるだけでなく、
強制的に解体や修繕がおこなわれるという精神的な負担も伴います。
このような事態を避けるためには、特定空き家に指定された場合には、
速やかに改善計画を立て、必要な措置を講じることが重要です。
特定空き家への対処法
もし所有する空き家が特定空き家に指定されてしまった場合は、速やかに改善計画を策定し、
必要な修繕や解体などの対策を実行に移すことが不可欠です。
放置すれば事態は悪化し、行政代執行などの強制的な措置につながるリスクが高まります。
まずは空き家の状態をしっかり確認しましょう。
必要に応じて専門家や自治体の窓口に相談し、現状の分析と適切なアドバイスをもらうことで
どこから手を付けるべきか、優先順位を決めることができます。
大切なのは、改善した後も継続的に管理を行うことです。
少しづつ管理を続けることが、空き家の安全性を守り、周囲の生活環境を守るためにかかせません。
まとめ
放置された空き家は、所有者だけでなく、近隣住民に多大な迷惑を及ぼす可能性があり、
様々なトラブルの温床となります。
建物の倒壊リスク、犯罪の誘発、衛生環境の悪化など、放置することで発生する問題は
地域全体の安全と生活の質を脅かすことにもつながりかねません。
空き家を放置せずに、適切な管理や活用を行うことが極めて重要です。
管理サービスを利用する、賃貸物件として活用する、売却するなど、様々な方法があります。
どの方法を選択するにしても、早めの対策を講じることが問題を深刻化させないための鍵となります。